子供が消える町に、“それ”は現れる。
作品情報
原題 | IT |
製作 | 2017年/アメリカ |
レイティング | R15+ |
上映時間 | 135分 |
監督 | アンディ・ムスキエティ |
出演 | ビル・スカルスガルド ジェイデン・リーバハー ソフィア・リリス ジェレミー・レイ・テイラー フィン・ウォルフハード ワイアット・オレフ チョーズン・ジェイコブス ジャック・ディラン・グレイザー |
あらすじ
1988年、アメリカの田舎町デリー。町では不可解な子供の失踪事件が頻発しており、ビルの弟ジョージーもそのひとりだった。子供をさらい、町に恐怖を蔓延させている元凶、謎のピエロ、ペニーワイズの存在へと接近したビルと仲間たちだったが、それは同時に、自分たちもペニーワイズの標的になっていることを意味するのだった……。
感想と評価
27年周期で田舎町デリーへと現れ、新鮮な子供をさらってはプカプカ浮かせて貪り喰らう、人喰いピエロ、ペニーワイズによる恐怖の蔓延と、それに立ち向かういじめられっ子たちの一夏の冒険を描いた、スティーヴン・キング原作による大ヒットジュブナイルホラーです。
監督は『MAMA』のアンディ・ムスキエティで、腐れ芸人ペニーワイズを演じるのは『バーバリアン』のビル・スカルスガルド、共演には『ロッジ -白い惨劇-』のジェイデン・リーバハー、『ナンシー・ドリューと秘密の階段』のソフィア・リリス、『グースバンプス 呪われたハロウィーン』のジェレミー・レイ・テイラー、『ストレンジャー・シングス』シリーズのフィン・ウォルフハードなど。
一見すると牧歌的でありながら、その裏側には大きな歪みを抱えているアメリカの田舎町を舞台に、その歪みの元凶である血塗られた土着神、子供喰いピエロことペニーワイズにロックオンされた少年たちの、恐怖とそれに打ち勝つ団結と勇気、そして成長を描いた本作。
子供たちを主体としたジュブナイルだからといって、まったくホラーとしての恐怖、残酷さから逃げなかったのが本作の優れた点で、冒頭から情け容赦なく喰いちぎってきており、さっそくのペニーワイズのやる気満々には頭が下がる思いです。
その後も手を変え品を変え、さまざまな趣向を凝らした恐ろ楽しいペニーワイズ劇場で、子供たちの心に一生消えない恐怖をデリバリーするペニーワイズ兄さんの芸人魂は、いまこの瞬間だけではなく、長年にわたってこのデリーの町を侵食し続けていたのですよね。
彼の腐った芸によって浸食、汚染され続けた町デリーは、その内部に暗く淀んだ汚水を貯め続けており、それによって町そのものから強烈な腐敗臭が漂ってきていて、それはもうただのひとりもロクな大人がいないという現実が強烈に示しております。
実はこの映画で真に恐ろしいのはペニーワイズではなく、彼が蔓延させた恐怖に汚染されて無自覚に腐っていっている、どうしようもない大人たちによる子供たちへの無関心、抑圧、支配という名の児童虐待なのではないでしょうか。
腐れ芸人ペニーワイズを起点とし、町全体で子供たちを殺しにかかっていると言っても過言ではない、とてつもなく大きくて深い闇を描いた本作ですが、闇が深ければ深いほど、その中で輝く光は強さを増すのです。
本作における光とは何かといったら、それはもう青春、キラキラまぶしいルーザーズクラブの少年少女たちが放つ青春の光にほかなりません。
負け犬を自称する彼らが、この腐った町の汚物によって植えつけられた心の闇。
それを恐怖として可視化したのがペニーワイズであり、それに打ち勝つにはやはり大きく強い光が、彼らが放つキラキラまぶしい青春の光が必要だったのです。
本作『IT/イット “それ”が見えたら、終わり。』とは、普遍的な青春の光と闇、過酷な少年期とそれを乗り越えて大人へと成長する通過儀礼、そう、誰もが経験する獲得と喪失を描いたジュブナイルホラーであり、この普遍性こそが広く深い支持を得た要因なのだと私は思います。
彼らに自らを重ねたからこその、恐怖とまぶしさなのだと思います。
おすすめポイント
DVD&Blu-ray
VOD/動画配信
『IT/イット “それ”が見えたら、終わり。』が配信されているVODはこちら(2023年1月現在。最新の配信状況は各公式サイトにてご確認ください)。
予告編動画
(C) 2017 Warner Bros. Entertainment Inc. and RatPac-Dune Entertainment LLC. All Rights Reserved.