殺しのドレス
本記事では映画『ファブリック』の作品情報、あらすじ、感想と評価、おすすめポイントを紹介しております。ネタバレ?それはとどのつまり主観の相違です。
作品情報
原題 | In Fabric |
製作 | 2018年/イギリス |
レイティング | PG12 |
上映時間 | 118分 |
監督 | ピーター・ストリックランド |
出演 | マリアンヌ・ジャン=バプティスト ヘイリー・スクワイアーズ レオ・ビル ファトゥマ・モハメド |
あらすじ
夫と離婚したばかりの女性シーラは、セール中のブティックで魅力的な真っ赤なドレスと出会い、運命的にそれを購入する。しかしそれを身に着けて出かけた直後から、彼女の周囲で不可解な現象が頻発し出し、その背後では常にゆらゆらとあの真っ赤なドレスが揺らめいていたのだった……。
感想と評価
謎めいたブティックでセール中の真っ赤なドレスを購入したことから、悪夢的な迷宮へと迷い込んでしまった人々の悲喜劇を独特の世界観によって描き出した、イギリス発のオカルトホラーコメディです。
監督は『バーバリアン怪奇映画特殊音響効果製作所』のピーター・ストリックランドで、出演は『ザ・セル』のマリアンヌ・ジャン=バプティスト、『わたしは、ダニエル・ブレイク』のヘイリー・スクワイアーズ、『28日後…』のレオ・ビルなど。
「2021年公開おすすめホラー映画リスト」という記事の中で本作を紹介したとき、「いい感じの置いてけぼりを食らえそうな予感がヒシヒシといたしますな」という期待感を綴ったのですが、その期待どおりの置いてけぼりを味わえたなかなかの変態映画でありましたよ。
呪われたドレスと、それに魅入られた人々の死の恐怖、なんて設定から想像したであろう我々の予測範囲から大きく逸脱した奇怪な物語は、デヴィッド・リンチとダリオ・アルジェントのあいだに生まれた奇形児のような、極彩色の悪夢的かつ喜劇的な迷宮だと形容してもよいかも。
要するにロジックではなく、監督のイメージが前へ前へと先行した意味不明難解映画の類で、正直かなり観る人を選ぶ映画だとは思いますが、アルジェント、リンチ、最近ではニコラス・ウィンディング・レフンなんかを好む変態様には、胸を張っておすすめできる良作だと思います。
なんというかこう資本主義の仕組みだとか、性的抑圧だとか、薄っすらと想像できるものをあえて想像するのを止めても問題ないような、とにかくこう変態的、観念的なイメージを愛でる、そんな悪夢的迷宮へと溺れることが、本作を楽しむコツかと思いますので、皆さんどうぞ前向きに溺死しちゃいましょう。
途中から所有者に死をもたらす赤いドレスのことなんかどうでもよくなって、奇人変人狂人だらけの極彩色な悪夢的迷宮で迷子になることが気持ちよくなってきますから。
惜しむらくは少々長いということでしょうかね。
正直後半は多少の息切れを感じたような気がしますが、その息切れは本当に映画自体のものだったのか、私自身の息切れだったのか、とにかく溺れ続けるにも体力は必要ってことなのよね♡
おすすめポイント
- どこか呪術的な中毒性のある音楽とCMの気味の悪い気持ちよさ!
- 狂ったように踊り出す洗濯機の破壊的ダンスと、その修理方法を懇々と説明する長話によって生まれる得も言われぬ恍惚感♡
- 資本主義的魔女の巣窟のようなブティックの変態的エロティシズムはちょっと何言ってるのかわからない不条理的現実!
VOD/動画配信
『ファブリック』が配信されているVODはこちら(2021年2月現在。最新の配信状況は各公式サイトにてご確認ください)。
予告編動画
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