奇妙な「音」の謎は、その部屋の過去につながる――。
作品情報
製作 | 2016年/日本 |
レイティング | G |
上映時間 | 107分 |
監督 | 中村義洋 |
出演 | 竹内結子 橋本愛 滝藤賢一 佐々木蔵之介 坂口健太郎 |
あらすじ
怪談雑誌で読者の体験談を短編化している小説家の「私」のもとに、女子大生の「久保さん」から、「引っ越し先の部屋で奇妙な音がする」という手紙が届く。興味をもった「私」は「久保さん」と調査を開始するものの、怪異はその部屋だけにとどまらず、驚くべき広さ、深さ、闇へと通じていたのだった……。
感想と評価
マンションの一室から聞こえる奇妙な音をきっかけとし、その真相解明へと乗り出した主人公たちが知ることになる、恐るべき因縁の深さと広がりを描いた、小野不由美の第26回山本周五郎賞受賞作を映画化したミステリーホラーです。
監督は『日野日出志のザ・ホラー 怪奇劇場 ~第一夜~』の中村義洋で、主演は『クリーピー 偽りの隣人』の竹内結子、共演には『寄生獣』の橋本愛、『恐怖』の滝藤賢一、『空母いぶき』の佐々木蔵之介、『仮面病棟』の坂口健太郎など。
女子大生が初めて借りた部屋から聞こえてくる異音を発端とし、その根っこを探るうちに触れてはいけない、開けてはいけないパンドラの箱を開いたことにより、無数の怪異が数珠つなぎ的に押し寄せてくる恐怖を描いた、実に日本らしい正真正銘の「事故物件」映画。
『事故物件 恐い間取り』や『事故物件芸人』シリーズなど、昨今この手の映画がひそかなブームを起こして大量に製造されておりますが、「本作の爪の垢でも煎じて飲め!」と言いたくなるような酷い出来のものばかりで、この『残穢【ざんえ】 -住んではいけない部屋-』がいかに良く出来ていたのかをあらためて再認識いたしましたね。
マンションの一室から聞こえる奇妙な音、こんな小さな怪異をきっかけとし、その建物の、その土地の、その場所に住んでいた人間の、ぬぐいようのない穢れの連鎖を、ルポタージュ形式で知的なミステリーとして解き明かしていく構成が秀逸で、観客の好奇心と恐怖心を見事にかき立ててくれております。
辿れば辿るほど、掘れば掘るほど、際限なく続いていく穢れの底なし沼には、劇中でも言及されているとおり、「実はこの世界に穢れていない場所なんか存在しないのではないか?」という、我々の足元にまで及んでくる不浄な世界の広がりを意識させ、そこで植えつけられた不安感は映画を飛び出してくるのです。
我々の身近にも、いま立っているこの場所にも、穢れが存在しているのかもしれない。
そう思わすためには、我々が日常的に感じる不安感を映像化することも必須であり、この『残穢【ざんえ】 -住んではいけない部屋-』という映画は、明確な何かが映っていない、ただの空間、建物、場所がなんとなく薄気味悪い感じをちゃんと演出しており、真に恐ろしいのは映っていない、見えない何かを想像してしまう我々の感受性なのだということがよくわかります。
それを追体験している対象が、怪異に対して大袈裟に騒ぎ立てる阿呆どもではなく、知的に、冷静に、ある意味ローテンションで臨んでいることも効果を発揮しており、ギャーギャーわめくことは必ずしもホラー映画にとって良いことではないのですよね。
最後までこの感じを貫き通し、ある意味では不条理に作用する穢れの存在をエンドレスに匂わせ、さらなる想像の余地を残して終わってくれていたら、本当にこの作品は素晴らしいものになっていたと思うのですけど、最後の最後でわかりやすい蛇足を見せてしまったことは大きなマイナスポイントでしたね。
見せないなら見せない、見せるなら見せるで、中途半端なことをしちゃいけません。
凄くいい仕事をしていただけに、本当にここだけが残念でした。
おすすめポイント
DVD&Blu-ray
VOD/動画配信
『残穢【ざんえ】 -住んではいけない部屋-』を配信しているVODはこちら(2023年1月現在。最新の配信状況は各公式サイトにてご確認ください)。
予告編動画
(C)2016「残穢 住んではいけない部屋」製作委員会