わたしは美しい…
作品情報
原題 | The Stylist |
製作 | 2020年/アメリカ |
レイティング | G |
上映時間 | 104分 |
監督 | ジル・ガヴァーギジアン |
出演 | ナジャラ・タウンゼント ブレア・グラント |
あらすじ
言い知れぬ疎外感を抱えて孤独に生きる美容師のクレア。彼女はときおり遠方から来た客を狙い、昏睡させて頭皮を剥ぎ取り、それをコレクションしては涙交じりの悦へと浸っていた。そんな彼女に常連客のオリビアから結婚式のヘアセットが依頼されるのだが、これをきっかけとしてクレアの精神はさらなる混乱を極めていくのだった……。
感想と評価
孤独感からある種の変身願望へと憑かれ、客の頭皮を剥ぎ取ってはそれを被ってヘタな物真似を披露する、美しくも悲しい殺人美容師の精神崩壊を描いたサイコスリラーです。
監督は自身もヘアスタイリストとして活躍し、その体験を通して本作を制作した新人のジル・ガヴァーギジアンで、主演は『スリーデイズ・ボディ 彼女がゾンビになるまでの3日間』のナジャラ・タウンゼント、共演には『引き裂かれた心』で先頃、監督デビューを果たしたブレア・グラント。
『殺人美容師 頭の皮を剥ぎ取ります』なんて、頭がおかしいとしか思えない狂った邦題に心惹かれないホラーファンはいないかと思いますが、そういう綺麗な心を持ったホラーファンを必ずしも幸せにはしてくれない、ちょっと変化球な映画かな?というのが正直な感想です。
狂った欲望に憑かれたキチガイが客の頭皮をメリメリと剥ぎ取り、それを被っては悦へと浸り、性的快楽、肉体的欲望、心理的錯乱のもと、手当たり次第に頭の皮を剥いで剥いで剥ぎ取り狂う!なんて『悪魔のいけにえ』美容師版のような狂気はここにはなく、本作にあるのは狂気よりも、哀しさと切なさと心細さと。
確かに頭の皮はメリメリと剥ぎますが、その描写もちょいとアートへと寄せたカフェオレで、ギンギンに瞳孔が開くブラック好きの我々ホラーバカには物足りない、いわゆるホラー映画としての弱さは感じるものの、ひとりの女性が抱える孤独感へと焦点を置いた心理ドラマとしては優秀で、そういう見方をすれば十分に見ごたえがあるかと思われます。
まあ人による部分もあるでしょうけど、彼女の危険な言動に恐怖を覚えるというよりかは、その危なっかしさや弱さ、そして多くは語られない病理のバックボーンが心配になり、違う意味でハラハラドキドキしてしまうのですよね。
そういう意味では、人としての弱さや生きづらさを抱えている人にとっては、けっこう刺さる映画かもしれません。
ハグなどのボディタッチに対する極端な不器用さなど、他人との距離感がわからない彼女の生きづらさが端的に表されていて、私なんかはけっこうグッと来るものがありましたよねぇ……。
おすすめポイント
VOD/動画配信
『殺人美容師 頭の皮を剥ぎ取ります』を配信しているVODはこちら(2022年12月現在。最新の配信状況は各公式サイトにてご確認ください)。
予告編動画
(C)MMXX The Stylist Film LLC All Rights Reserved.