彼女は消えた、跡形もなく、忽然と 彼はただ知りたかった、その行方を
本記事はホラー映画『ザ・バニシング-消失-』の作品情報、あらすじ、感想と評価、おすすめポイントを紹介しております。ネタバレ？それはとどのつまり主観の相違です。
作品情報
| 原題 | Spoorloos The Vanishing |
| 製作 | 1988年／オランダ、フランス |
| レイティング | G |
| 上映時間 | 106分 |
| 監督 | ジョルジュ・シュルイツァー |
| 出演 | ベルナール・ピエール・ドナデュー ジーン・ベルヴォーツ ヨハンナ・テア・ステーゲ |
あらすじ
オランダからフランスへと、車による小旅行へとやって来たレックスとサスキアのカップル。しかし立ち寄ったドライブインで、サスキアは忽然と姿を消してしまう。なんの手掛かりも見つからないまま3年が過ぎ、それでも執念でサスキアの捜索を続けるレックスのもとに、自分が犯人だと名乗る謎の男が接近してくるのだった……。
感想と評価
突如失ってしまった最愛の女性を捜し続ける男と、その真相を知っている唯一の男とが出会い、その奇妙な道行の果てに訪れる驚愕の結末を描いた、2019年に待望の日本初公開が実現したカルト的人気を誇るサイコスリラーです。
監督は1993年に『失踪』としてハリウッドによるセルフリメイクも手掛けたジョルジュ・シュルイツァーで、主演は『グレート・ウォーリアーズ』のベルナール・ピエール・ドナデューに、『さまよえる人々』のジーン・ベルヴォーツ。
かのスタンリー・キューブリックが、「これまで観た映画の中で最も恐ろしい」とまで評した、長らく日本では劇場未公開だった幻のカルト的スリラー。
確かにこれは観れば観るほど、考えれば考えるほど恐怖が増していくイカ臭スルメスリラーで、表面を舐めるだけではけっして味わえない、噛めば噛むほどあふれ出てくる、くっさ～い旨味が病みつきになる類の作品かと思われます。
最愛の女性を失いながら、その喪失感以上に真相を知ること、欠けたパズルのピースを捜すことに憑かれた男と、ベクトルは違えど、自らの限界や正常と異常との境界を知るため、実験的に犯罪へと手を染めた男とが運命的に出会い、その答えへと静かに車を走らせる実験結果。
ここで犯人と被害者家族はある種の運命共同体となり、すべては運命論的な因果律の輪の中で起こった必然、そうなるためにここへ来て、そうなるために出会い、必然的な結果が訪れたことを、我々は知るのです。
ここには憎悪も、欲望も、例えば明確なかたちでの狂気すら存在してはおらず、あらかじめ予定された結果へと至る実験、それをまるで静かに観察しているような、俯瞰しているような、何やらよくわからない心持にさせられる、本当に奇妙な映画だと思います。
けっしてわからない、難解な映画だというわけではありません。
信用できない犯人のひとり語りではありますが、すべての情報はきちんと開示されている、どちらかといえば親切設計なのですから。
ただ、情報は開示されているものの、最も大事な答えを描いていないというか、これらの情報から我々観客が何を思い、何を感じ、どのような結論へと至るのか、まるでテストをされているような、もしくは我々自身が被験者であるかのような作品で、この構造自体がまた怖いのですよね。
何かを失ったことから何かに憑かれた男が、何にも縛られない男が唯一恐れたかもしれないある恐怖症に対する実験対象に……って、これ以上進めると肝心要のネタバレへと接近しそうですので、ここいらで自重しておきます。
この映画に対する解答は、鑑賞者それぞれが自分で導き出すものだと私は思いますので。
恐怖度：
グロ度：
面白さ：
総合評価：B
おすすめポイント
DVD＆Blu-ray
VOD／動画配信
『ザ・バニシング-消失-』が配信されているVODはこちら（2023年1月現在。最新の配信状況は各公式サイトにてご確認ください）。
予告編動画
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