スラッシャー映画とは、無数にあるホラー映画のサブジャンル中のひとつで、一般的には頭のおかしい殺人鬼によって標的にされた生贄たちの阿鼻叫喚を、血とエロスによって享楽的に描いた心癒される現代のおとぎ話のことである。
1980年代にそのブームはとてつもない熱と血を帯び、世界中のポンコツどもによって一大スラッシャーブームを巻き起こすのですが、熱く燃え上がりすぎた炎は鎮火するのもまた早く、あっという間に消費されつくして、1990年代に入る頃にはもはや下火に。
しかし、スラッシャー映画は、殺人鬼は死ななかった。
その時代に合わせて姿かたちは微細に変化させながら、あくまで人体を切り刻むことをモットーに、草葉の陰で、ときおり陽の光を浴びながら、現代まで生き続けて人を殺して殺して殺しまくっていたのです!
今回はそんなゴキブリ並みの生命力を誇るスラッシャーホラーのおすすめ作品を、嫌がる貴方を相手に無理矢理にでもご紹介していきたいと思いますので、どうぞ最後までお付き合いください。
各作品が配信されているVOD(動画配信サービス)も紹介しておりますので、どうぞご参考に(2021 年1月現在。最新の配信状況は各公式サイトにてご確認ください)。
おすすめスラッシャーホラー
暗闇にベルが鳴る
作品情報
- 1974年/カナダ/98分
- 監督:ボブ・クラーク
- 出演:オリヴィア・ハッセー/キア・デュリア/マーゴット・キダー
あなたは誰!なぜ私たちを―
クリスマス前後のとある大学の女子寮を舞台に、一本のイタズラ電話をきっかけとして始まる陰惨な連続猟奇殺人を描いた1974年の作品です。監督は『死体と遊ぶな子どもたち』のボブ・クラークで、主演は布施明に「君は薔薇より美しい」と口説き落とされたオリヴィア・ハッセー。
何をスラッシャー映画の始祖とするかは意見が分かれるところでしょうが、特定の祝祭日に、限定的な場所で、多感な美少女たちが、一人称視点の殺人鬼に惨殺されるという、スラッシャー映画の雛形を作ったのはこの作品なのではないかと私なんかは思っております。
マイナーゆえにその知名度は低いですが、始祖ゆえの安定的な面白さと恐怖を上回る、特異な殺人鬼描写がキラリと光る隠れた逸品です!
『暗闇にベルが鳴る』を配信しているVODは現在ありませんので宅配レンタルがおすすめ。TSUTAYA DISCAS(レンタル)
13日の金曜日(1980)
作品情報
- 1980年/アメリカ/95分
- 監督:ショーン・S・カニンガム
- 出演:ベッツィ・パルマー/エイドリアン・キング/ケヴィン・ベーコン
なぜ全米で失神者が続出したのか!?
13日の金曜日に起きたある事件をきっかけとし、長らく閉鎖されていたクリスタルレイクのキャンプ場を舞台に、指導員候補生たちを襲う正体不明な殺人鬼の暗躍を描いた1980年の作品です。監督は『ザ・デプス』のショーン・S・カニンガムで、若き日のケヴィン・ベーコンがなにげに出演。
「スラッシャー映画といえば?」と尋ねられて誰もが真っ先に思い浮かべるであろう超有名作。ホッケーマスクを装着した物言わぬ巨漢殺人鬼、ジェイソンの殺戮祭りに皆さま心躍らせたことでしょうが、実は記念すべき第1作ではジェイソン君は誰ひとりとして殺めてはおらんのです。
本作はスラッシャー映画のアイコンと化したジェイソン誕生のきっかけを描いた、奇形差別を、イジメを、セックスを、リア充どもを許さぬ、世直し殺戮映画だったのです!
『13日の金曜日』(1980)を配信しているVODはこちら。
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スクリーム
作品情報
- 1996年/アメリカ/111分
- 監督:ウェス・クレイヴン
- 出演:ネーヴ・キャンベル/スキート・ウールリッチ/ドリュー・バリモア
叫びだしたら、止まらない
カリフォルニア州の田舎町を舞台に、今やハロウィンで定番のゴーストマスクを装着した殺人鬼に付け狙われる美少女の恐怖と笑いを描いた1996年の作品です。監督は『鮮血の美学』でデビューし、1980年代には『エルム街の悪夢』シリーズをヒットさせたウェス・クレイヴン。
1980年代に一大ブームを巻き起こしながら、一気に消費されつくして1990年代にはもはや過去の遺物と化していたスラッシャー映画。本作はそんな遺物をネタとして扱い、メタ的なあるあると裏切りによって再構築した、恐怖と笑いが混在化した発展形スラッシャー映画だと言えるでしょう。
スラッシャー映画あるあるについて登場人物たちが嬉々として喋りまくり、時にはそのとおり、時にはその逆を行く死にざまに是非とも注目していただきたい!
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デッドコースター
作品情報
- 2003年/アメリカ/90分/R-15
- 監督:デヴィッド・R・エリス
- 出演:A・J・クック/マイケル・ランデス/アリ・ラーター
生き残るのは、死んでも無理
予知夢によって凄惨極まりないハイウェイ事故から辛くも逃れた9人の男女。しかし運命に逆らった彼らは、シナリオ改竄を認めない死神によって執拗に狙われ続けるという2003年の作品です。監督は『スネーク・フライト』『シャーク・ナイト』などの佳作アニマルホラーを撮りながら、2013年に早世したデヴィッド・R・エリス。
スラッシャー映画の殺人鬼とは実体を伴ったものでなければならないのか?という見事な発想で、姿なき死の運命、逃れられない死のシナリオを殺人鬼として設定した『ファイナル・デスティネーション』シリーズは、すでにネタが出尽くした感のあるスラッシャー映画にとっての起死回生。
中でも2作目『デッドコースター』における死神の美学は凄まじく、冒頭のハイウェイ事故からフルスロットルな美しきまでのピタゴラ的殺戮祭りに、どうぞ皆さま歓喜せよ!
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サプライズ
作品情報
- 2011年/アメリカ/94分/R15+
- 監督:アダム・ウィンガード
- 出演:シャーニ・ヴィンソン/ニコラス・トゥッチ/バーバラ・クランプトン
家に誰かが入ってきたらしい。
両親の結婚35周年を祝うために人里離れた別荘へと集まった10人の家族。そんな一見すると幸せそうな家族の晩餐を、動物の覆面を被った謎の殺戮者たちが襲撃してくるという2011年の作品です。監督は『ザ・ゲスト』のアダム・ウィンガード。
スラッシャー映画の醍醐味とは狂気の殺人者によって標的にされた、生贄どもの阿鼻叫喚の死にざまを嬉々として愛でるもの。そんなお約束を逆手にとって、狩る者と狩られる者との逆転現象によってスラッシャー映画の新境地を開いたのが本作『サプライズ』。
いい意味でふざけた軽薄さが抜群に面白く、急所をピンポイントで切り裂く人体破壊描写も的確に痛々しい、新世代スラッシャー映画の快作なんですよこれ!
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おすすめスラッシャーホラーまとめ
ある種の定型が機能するがゆえ、作りやすく、観やすく、それゆえに散々消費され尽くして一時は絶滅しかけたスラッシャーホラー。
しかしスラッシャー映画は、殺人鬼は絶対に死にましぇん!
その時代に合わせて姿かたちを変え、永遠に生き続け、人を殺して殺して殺しまくるのです!
そんな不死身のスラッシャーホラーの魅力を少しでも皆様に広げ、愛すべき殺人鬼たちのお役に立てるのであれば不肖な私の本望。
暇を見つけては新たなスラッシャーホラーの追加も行っていくつもりですので、「殺人鬼大好き♡」って狂った脳髄をお持ちの方はまたどうぞ遊びに来てね♡