無限の宇宙∞無限の恐怖
作品情報
原題 | Event Horizon |
製作 | 1997年/アメリカ |
レイティング | G |
上映時間 | 95分 |
監督 | ポール・W・S・アンダーソン |
出演 | ローレンス・フィッシュバーン サム・ニール ジョエリー・リチャードソン キャスリーン・クインラン |
あらすじ
西暦2047年。7年前に忽然と消息を絶った超深宇宙探査船イベント・ホライゾン号が海王星付近で発見され、救助艇ルイス&クラーク号がその調査へと向かうことに。しかし、イベント・ホライゾン号の内部へと潜入した彼らが見たものは、荒れ果てた船内、乗組員の惨たらしい死体、自分たちを襲う幻聴と幻覚、そしてまぎれもない地獄なのであった……。
感想と評価
人類が宇宙へと進出した2047年を舞台に、7年間消息不明だった超深宇宙探査船イベント・ホライゾン号の調査へと向かったクルーを襲う、深淵の向こう側に広がる絶望的新世界を描いたSFホラーです。
監督は「ダメなほうのポール・アンダーソン」として名高い『バイオハザード』シリーズのポール・W・S・アンダーソンで、主演は『シグナル』のローレンス・フィッシュバーンと『ポゼッション』のサム・ニール、『マギー』のジョエリー・リチャードソンや『ヒルズ・ハブ・アイズ』のキャスリーン・クインランなどが脇を固めます。
『マグノリア』や『パンチドランク・ラブ』のポール・トーマス・アンダーソンと比較され、大味なエンタメ作ばかりを撮る「ダメなほうのポール・アンダーソン」と揶揄される、ポール・W・S・アンダーソン唯一の傑作といってよいのが本作『イベント・ホライゾン』。
「イベント・ホライゾン」とは物理学における相対性理論の概念で、我々が知りうる領域の境界面を指して、「事象の地平面(Event Horizon)」と呼ばれるのですが、まあ正直なんのこっちゃわからんのでわからんまんま置いといて、つまりはその境界の向こう側に存在する何か、それに触れた人間の末路を阿鼻叫喚の地獄絵図として描いているわけです。
宇宙の果て、我々の認知が及ぶ範囲を超えた場所には神が、天国が存在するのではなく、悪魔が、地獄が渦巻いているという、ホラーマニアにとっての極楽を描いたともいえる本作『イベント・ホライゾン』。
過去の傑作ホラーを寄せ鍋的にぶち込んだ既視感は漂うものの、その選択とバランス感覚はなかなかの塩梅で、それにポール・W・S・アンダーソンらしい王道的エンタメ性が加味されることにより、適度なスリルと恐怖、謎、意外な芸術性と哲学を生み出しており、思いがけずこぼれ出した内臓による人体破壊の美しさなんて、ある種の神々しさすら漂わせておりました。
『エイリアン』を彷彿とさせる導入部から、『惑星ソラリス』的な宇宙の神秘、『たたり』的な幽霊屋敷の怪異へと移行し、思わず『シャイニング』があふれ出し、最後には監督の敬愛する『ヘル・レイザー』のごとき人体破壊描写の美が炸裂するという、「お前は本当にあのポール・W・S・アンダーソンなのか?」と人違いを疑う、実にハードでスリリングなSFホラーには素直な興奮を覚えます。
いま観るとさすがにCGはアレですが、プロダクションデザイン(美術)の素晴らしさも本作成功の一翼を担っており、とりわけイベント・ホライゾン号とその内部、そして文字通り物語の核となるコアの重厚かつ禍々しい造形は、見るからによからぬことが起きそうで鼻息が荒くなりますよ。
「ポール・ダメなほう・アンダーソンのしょっぺえバカ映画なんか観ねえよ」と息巻いているあなた、どんなにバカでアホでダメな監督でも、何かの間違いによって傑作を撮ることもあるという事実を、本作を観ることによってどうぞ知ってほしいですね。
もしかしたら、バカであればあるほど、まぐれ当たりの飛距離はとんでもないものになるかもしれないのですから。
おすすめポイント
DVD&Blu-ray
VOD/動画配信
『イベント・ホライゾン』を配信しているVODはこちら(2023年1月現在。最新の配信状況は各公式サイトにてご確認ください)。
予告編動画
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